基礎理工学科について>基礎理工的物語

マルサスの人口論

 ジェームズ・ワットの蒸気機関など英国で始まった産業革命の最中の1798年に、マルサス(英国1766-1834)は人口増加による危機の到来を訴えた。マルサスは過去のデータから

  1. 人口は等比数列的に増加する(要するに倍々ゲームのように激しく増える)
    それに対し、
  2. 食糧供給は等差数列的にしか増加しない(一定量ずつしか増えない)
    ということに注目し、そのため飢饉、疾病、戦争などによる抑制を受けながらも、人口は爆発的に増え続け、世界的な食糧危機に陥ると予測した。このことが事実であれば、世界は大変な混乱と破壊的な出来事に見舞われると思われた。数学的には、そのときの人口を jinkou_N.png とおくと、増加率 latex math image は人口に比例し、
       latex math image
    で表されるだろう。この解は指数関数により
       latex math image
    と表されることは代入すれば確かめられる。
    (このような微分を含む方程式を微分方程式といい、いろいろな法則を数学的に表現するときに不可欠なものです。詳しくは、大学に入ってから勉強しましょう。)

10000.jpg
マルサスの人口モデル

しかし、これに対し、1842年にケトレが、1845年にはヴェアフルストが人口増加の抑制要因として

  1. 食糧資源の不足
  2. エネルギーの供給不足
  3. 限られた地域への人口過密
  4. その他の環境問題
    などを挙げ、人口の増加率はマルサスが考えたように単純にそのときの人口 jinkou_N.png に比例せず、係数 latex math imagejinkou_N.png の増加とともに減少するとした。この考えを反映させるため、ヴェアフルストはマルサスの人口増加モデルを改良して、
       latex math image    (latex math image はある 定数)
    で表されると予測した。すなわち、latex math image の代わりに latex math image とした。このときの解はちょっとややこしいが
       latex math image
    となることが分かる。そして、自身の町の人口変動に適応してみて、よく付合することを知り、自分の立てた人口増加モデルの確かさを確信した。

10000-50000.jpg
ヴェアフルストの人口モデル

 以上で分かるように、マルサスのモデルにおいても、ヴェアフルストのモデルにおいても人口 latex math image を表すのに用いられる関数は単純な指数関数である。