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浅倉史興 教授,理学博士

略歴・専門分野

信州上田の生まれ.小学校・中学校の頃は模型工作に没頭し,将来はエンジニアになりたい;物理学者,化学者も面白そうと漠然と考えていた.高等学校で担任の数学教師から,「日本の物理学者の活躍は世界的だが,数学者の活躍はそれ以上だよ」といわれ,急に数学に傾いた.大学進学については,「湯川理論は,阪大助教授時代に創られた」のようなことを聞きつけ,大阪大学理学部数学科と目標を決め,運よく合格した.

大学では,マイペースで読んでいた,R.クーラント「数理物理学の方法」の世界が楽しく思えて,関数解析学+偏微分方程式論を研究しようと決めた.4年生の「数学講究」では,熊ノ郷準先生のところで,前半はヒルベルト空間,後半は双曲型方程式を学んだ.これで,私の数学の方向は完全に決まってしまっていた.

大学院は,京都大学の理学研究科数学専攻へ進学した.京都大学へ移ったのは,阪大での4年間が案外長く感じられて,他の世界を経験したかったことが大きい.ここでの5年間は,溝畑茂先生(京大退職後に本学教授)より,「解析学とはなにか?」を教えて頂いたつもりでいる.京都大学には,工学部出身で非線形問題を研究している優れた数学者達もいて,その中の西田孝明先生が「非線形双曲型保存則序論」という講義をされた.これは,衝撃波の数学理論のようなものであるが,結局のところ,現在の私の専門分野となる.

大学院の5年間では博士論文を完成できなかったが,追手門学院大学経済学部(専任)講師として就職することができた.文系の大学といえども,近代経済学の先生方のみであったので,数学についての造詣が深く,私の研究と教育に期待していただき,大いに励まされた.また,統計学とコンピュータについては,プロ達よりいろいろと教えを受けることができた.さらに,日本でも屈指の経済学,経営学,歴史学などの研究者達との日々の会話により,私の知的水準(?)は幾分かは高まったようである.

就職して4年目でようやく,固有値問題で学位がとれ,パリ大学(オルセイ校)で1年間研究できる機会もやってきた.オルセイでは,世界最先端の偏微分方程式理論ができる様を直に見ることができた.そこで感じたのは:彼らの仕事を日本にいてcatch upしようとしても,決して追い付けない;計算しただけの数学では決して評価されず,独自の理論を創ってのみ評価される等々である.帰国後,当時の研究環境でも,上記の非線形双曲型保存則ならば自分自身の数学ができると考え,今日に至っている.

追手門大で,助教授,教授と昇任し,教授としての仕事(雑用?)が忙しくなった頃,大阪電気通信大学に誘われ,また一からやり直すつもりで本学に赴任した.工学部は,理学部とも経済学部とも勝手が違うが,昔模型工作に没頭していたころの記憶がよみがえり,工学部の先生方と付き合うのも楽しい.本学でも雑用が多く,自分の研究はなかなか進まないが,研究者としての地位を保つためにも,いま数学教育の重要性を社会に訴え,教育課程・教育方法を現状に合ったものに改革する必要を痛感している.

研究紹介

自然界のいろいろな波動現象を,偏微分方程式を用いて数学的に解析しています.自然現象は複雑すぎるので,それらを単純化した数理モデルがいろいろとありますが,最も単純化した1次元的モデル(波形の解析と考えれば良い)を研究しています.>>続きはこちら

高校生の皆さんに向けて

振り子の周期と次元解析

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皆さんを含めて,私たちが数学を学ぶ目的は何でしょうか?授業科目にあるから;入学試験科目にあるから;「勉強しなさい」と言われるからなどと,いろいろな理由があるかもしれませんが,やはり,数学は世の中の役に立ちます.数学を用いると,種々の自然現象や社会現象を解明することができるのです.また,数学の論理を知ることにより,人と人との間で的確なコミュニケーションが可能となります.ここでは,高校数学を用いて,振り子の周期の問題を考えてみたいと思います。>>続きはこちら